未だ登場せぬにもかかわらず、「キングダム」最大の注目を集める男がいる。
楚の大将軍・項燕。
史実では秦の統一軍を打ち破り、信に最大の敗北を与えたとされる。
なぜ伝説たちは彼を恐れ、読者は彼を待つのか。
これは、“不在の最強”・項燕の徹底解説だ!
なぜ項燕が「未登場最強」と呼ばれるのか
『キングダム』には、まだ一度も姿を現していないにもかかわらず、作中で最も期待されているキャラクターがいます。それが楚国の大将軍・項燕(こうえん)です。
王騎、廉頗、李牧——これまで多くの伝説級の将軍たちが物語を彩ってきました。しかし項燕は、その誰よりも特別な存在として語られています。なぜでしょうか?
答えは単純です。史実において、項燕は秦の統一戦争で唯一の大敗北を与えた男だからです。そして、その敗北を喫したのは、主人公・信(李信)その人なのです。
作中での異例な扱い
項燕はまだ登場していませんが、その名は作中で何度も言及されています。
- 廉頗が「最初から項燕を送るべきだった」と評価
- 傲慢なカリンが唯一「項燕将軍」と敬称をつけて呼ぶ
- 宰相・李園が国家戦略について彼の言葉を引用
- カンメイが若き日に副将として仕えていた
これは異例です。通常、漫画のキャラクターは登場してから評価が定まるものですが、項燕は登場前にして既に「格」が確立されているのです。
ファンコミュニティの熱狂
日本だけでなく、英語圏のファンフォーラム「Worstgen」でも、項燕は最も議論されるキャラクターの一つです。
- 「キングダムのラスボス確定」
- 「李牧を超える最大の敵」
- 「mad hype(超期待している)」
能力値予想、戦術分析、登場時期の推測——5000語を超える考察が日常的に交わされています。未登場キャラクターでこれほど議論されるのは、項燕だけでしょう。
作中での評価と伏線:なぜ伝説たちは項燕を恐れるのか
廉頗の戦術的評価:「同格の将」として認める
合従軍編で、楚王・考烈王が項燕の派遣を検討した場面があります。このとき、趙の老将・廉頗は即座に反対しました。
しかしこれは「項燕には力がない」という意味ではありませんでした。廉頗の発言を正確に読み解くと:
「項燕が到着する頃には戦は決している。最初から項燕を送るべきだった」
つまり廉頗は、項燕の実力を完全に認めた上で、「彼が来るまで待てない」と言っているのです。
戦国四大名将の一人である廉頗が、他国の将軍を対等に扱うことは極めて稀です。この一言だけで、項燕が廉頗と同格、あるいはそれ以上の存在であることが分かります。
カリンの異例な敬意:天才が唯一頭を下げる相手
楚軍の天才軍師カリン。彼女は普段、他の将軍を「類人猿」(カンメイ)や「知恵遅れ」(オルド)と呼ぶほど傲慢な人物です。
ところが、項燕に対してだけは態度が全く異なります。
- 必ず「項燕将軍」と正式な敬称を使用
- 口調が静かになり、どこか畏怖すら感じさせる
この態度の違いは何を意味するのでしょうか? ファンの間では、カリンがかつて項燕の直属の部下だったという説が有力です。カンメイと同様に、若き日に項燕のもとで学んだのかもしれません。
「軍事の天才」と呼ばれるカリンが、唯一敬意を示す存在——それが項燕なのです。
李園が認める戦略的洞察力:武人ではなく知将
宰相・李園は、項燕の言葉を引用しています。
「楚は広大な領土と資源を持ちながら、その潜在力を十分に活かしていない」
この発言は重要です。項燕が単なる武人ではなく、国家全体の戦略を理解する知将であることを示しています。
李園自身、ガイドブックでは知力95という高評価を得ている人物です。そのような人物が、楚の将来について議論する際に最初に訪ねたのが項燕でした。
この事実は、項燕が軍事だけでなく政治的影響力も持つ存在だったことを物語っています。
カンメイとの師弟関係:100戦無敗の強者が「副将」だった意味
合従軍編で蒙武と互角に戦ったカンメイ。彼は楚軍最強格の一人でしたが、若き日には項燕の軍で副将として仕えていたとされています。
この設定が意味するのは:
- 項燕のキャリアの長さ:カンメイが副将だった頃から、既に軍の頂点にいた
- 圧倒的な実力差:100戦無敗のカンメイですら「部下」だった
- 六大将軍時代からの活躍:少なくとも秦の六大将軍時代から中華全土を見渡していた
- 命名パターン:項燕(燕=つばめ)、項翼(翼=つばさ)、項羽(羽=はね)——鳥にちなんだ名前が段階的に小さくなる
- 伝説の宝剣所持:五大宝剣を持つということは、高貴な血統を示唆
- 武芸の才能:項翼は騰と互角に戦える実力者
- 秦軍20万のほとんどが壊滅
- 7人の高級将校が戦死
- 2つの大規模な陣営が焼き払われた
- 李信は数騎でかろうじて脱出
- 要塞を築いて籠城
- 一切の野戦を避ける
- 消耗戦に持ち込む
- 戦死説
- 敗北後の自害説
- 白起(秦)
- 王翦(秦)
- 廉頗(趙)
- 李牧(趙)
- 秦の統一戦争において唯一の大敗北を与えた
- 戦術的洗練度が他の名将に匹敵した
- 秦に全軍事資源の投入を強いた
- 楚国の滅亡を1-2年遅らせた
- 項超(項羽の父、早逝)
- 項梁(項羽を養育した叔父)
- 武力:95-98
- 知力:93-97
- 統率力:93-96
- 経験値:Sランク(最高ランク)
- 本能:101
- 「歴代最強トップ5、史上トップ10には確実」
- 「王騎や廉頗と同等か、やや上」
- 「李牧と同レベル、それ以上の可能性も」
- 「カンメイより総合的な将軍として上」
- 「本能型将軍の究極形態。最終的な信だけが本能において彼を超える」
- 「本能型でありながら戦術面でも化け物」
- 「王翦・李牧レベルの戦略型」
- 「三日三晩の追撃は完璧な戦略計画に基づく」
- 単行本75巻~80巻あたりでの本格登場
- 一部の予想では2034年頃(漫画の進行ペースに基づく)
- 「Imagine if when he first appears, it’s in a flashback of one of his campaigns」(最初の登場が遠征の回想シーンだったら想像してみて)
- 「楚侵攻が本格化する前に、彼や副将が他のトップクラスとの戦いを見たい」
- 李牧が「知」で戦う将なら
- 項燕は「知」と「魂」で戦う将
- 信の最大の挫折
- 王騎の遺志が試される舞台
- 飛信隊の絆が試される瞬間
- 「天下の大将軍」への最後の試練
- 信の敗北
- 昌平君の裏切り
- 楚の崩壊
- そして秦の統一
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つまり項燕は、合従軍編よりはるか以前から、中華最強クラスの将軍として君臨していたのです。
項翼との関係性:「項氏一族」という謎
楚には「項翼(こうよく)」という若き将軍がいます。彼は「雷」の異名を持ち、五大宝剣の一つ「莫邪刀」を所持しています。
項燕と項翼——両者の姓は同じ「項(こう)」。これは偶然ではありません。
ファンの間で最有力なのは父子関係説です。根拠は以下の通り:
もしこの関係が事実なら、項燕は後の英雄・項羽の直系の祖先ということになります。
史実の項燕:歴史が証明する「最後の英雄」
李信の20万軍を壊滅させた伝説の戦い
紀元前225年、秦王政(後の始皇帝)は楚征服の軍議を開きました。
老将・王翦は言いました。
「楚を討つには60万の兵が必要です」
しかし若き将軍・李信(信)は反発します。
「20万あれば十分です」
秦王政は李信の言葉を信じました——この判断が、後に秦最大の悲劇を招きます。
初期の快進撃と油断
李信と蒙恬は二軍に分かれて楚に侵攻し、平輿、鄢、郢などの都市を次々に制圧しました。李信は完全に勝利を確信していました。しかし、これはすべて項燕の罠でした。
項燕の巧妙な戦略
項燕は初期の戦闘で意図的に後退し、秦軍を油断させました。そして李信が陣を解き、兵を休ませたその夜——
項燕は三日三晩、不眠不休で秦軍を追跡し、城父の野で奇襲を仕掛けたのです。
この戦法は中国軍事史上でも屈指の大胆さです。三日間の高速追跡、完璧なタイミングでの夜襲、そして昌平君との連携による挟撃——すべてが完璧に実行されました。
壊滅的な結果
『史記・李信列伝』はこう記しています:
「楚の項燕、李信を大破す。七都尉死す。」
これは秦が統一戦争において喫した唯一の大敗北です。
この敗北により、秦王政は自ら王翦の隠居先を訪れ、頭を下げて復帰を懇願しました。項燕という一人の将軍が、秦の始皇帝に頭を下げさせたのです。
王翦との最終決戦:60万vs50万の壮絶な戦い
翌年、王翦は要求通り60万の兵(秦の全軍事力)を率いて楚に再侵攻しました。項燕もまた、楚の全軍50万を率いて迎え撃ちます。
王翦の徹底防御戦略
しかし王翦は、李信とは全く異なる戦略を採用しました。
項燕は何度も挑発を試みましたが、王翦は動きません。偽装退却も通用しませんでした。
1年後の逆転
そして1年後——楚軍が疲弊し、一部が解散を始めた瞬間、王翦は全軍をもって反撃しました。
撤退中の楚軍を蕲南で包囲し、項燕は壮絶な最期を遂げました。
項燕の死
項燕の死については諸説あります:
いずれにせよ、彼は最後まで楚軍を鼓舞し、自らの命をもって楚の滅亡を見届けました。
「戦国第五の名将」としての評価
伝統的に「戦国四大名将」として以下の4人が認められています:
しかし現代の歴史学者の間では、項燕を「第五の名将」に加えるべきという議論が高まっています。
その理由は:
項燕は「負けた将」でありながら、秦を最も苦しめた将として歴史に刻まれたのです。
項氏一族と項羽への継承:三世代の血の物語
楚の名門「項氏」とは何か
「項(こう)」という姓は、楚における名門中の名門です。
項氏一族は代々、楚王家に仕えた軍人貴族であり、その血筋からは名将が次々に生まれました。「項」はもともと楚の地名であり、王族の支流を意味する称号でもありました。
つまり、項氏とは楚王家の血を引く「準王族」にして軍門の本流なのです。
項燕から項羽へ:宿命の継承
項燕には二人の息子がいたとされます:
項羽の父・項超は早くに亡くなったため、叔父・項梁が彼に剣と戦の技を教えました。
そして項羽は、後に「西楚覇王」と呼ばれる中国史上屈指の英雄となり、秦帝国を滅ぼします。
つまり、史実ではこうなります:
「楚の名将・項燕は秦に滅ぼされ、その孫・項羽が秦を滅ぼした。」
これはまるで宿命の連鎖です。征服者と被征服者の関係が、三世代をかけて逆転したのです。
民が「項燕の名」を掲げた理由
項燕が死んだのは紀元前224年頃。しかしその名は、死後十数年経っても民の心に深く刻まれていました。
紀元前209年、陳勝・呉広の乱が勃発します。このとき、彼らは反乱の正当性を得るためにこう宣言しました:
「楚の名将・項燕は死んでいない。我らはその軍を継ぐ!」
彼らは「項燕の名」を旗印に掲げ、秦の圧政に反旗を翻したのです。
これは単なる歴史的逸話ではありません。秦がどれほど強大でも、項燕という一人の将が「不滅の象徴」として語り継がれていたことを示しています。
「燕・翼・羽」という命名の意味
項燕(燕=つばめ)
項翼(翼=つばさ)
項羽(羽=はね)
この3人の名前が示す「鳥」の連想は偶然ではありません。
燕が飛び、翼が広がり、羽が舞う——この順序はまるで、楚の栄光から滅亡、そして再生を象徴するようです。
燕は高く舞い上がり、翼は戦場に広がり、羽は炎の中で散る。それでも楚の魂は空を舞い続け、項氏の血脈を通して歴史の中に生き続けました。
ファンの予想と考察:登場はいつか、強さはどれほどか
能力値予想:「天下最強クラス」は確実
英語圏のファンフォーラム「Worstgen」での最も人気のある予想:
ファンは項燕を一貫して「天下最強クラス」に位置づけており、以下のような評価が見られます:
将軍タイプ:本能型か戦略型か
最も議論されているのが、項燕の将軍タイプです。
主流派:本能型の頂点
少数派:戦略型
個人的には、項燕は本能と戦略の両方を兼ね備えた「完全体」だと考えます。李信戦での大胆な追撃は本能を、王翦との消耗戦での粘り強さは戦略を示しています。
登場時期の予想
日本のファンの予想:
英語フォーラムでの反応:
予想される戦いへの期待
第一の戦い(城父の戦い)
ファンが最も期待しているのは、信と蒙恬を破る展開です。
Worstgenフォーラムのあるユーザーの予想:
「昌平君が信と蒙恬が既に征服した都市で反乱を起こし、彼らを引き返させる。そこで項燕が奇襲をかける。項燕は信の7人の将校を殺し、完全に打ち負かす。これは秦の統一において最大の敗北であり、信のキャラクター展開における巨大な出来事となるだろう」
日本のファンも同様に期待しています:
「史実での戦がキングダムで描かれることになれば、合従軍以上の盛り上がりを見せる大戦になる」
最終決戦(vs 王翦)
60万vs50万の大軍同士の戦いとなることが予想されており、「キングダムのクライマックス戦争」となる可能性が高いと見られています。
楚戦がキングダム最大の山場になる理由
李牧戦を超える「南の最終決戦」
『キングダム』の物語における李牧戦は、確かに大きな節目です。しかし、それは「北方の物語の終章」に過ぎません。
真の最終章は、南方の巨国・楚との戦いにあります。
史実でも、楚の征服は秦の統一戦争の最終局面であり、最大の難関でした。
その差は、単なる技術の差ではなく、国家の命運を背負う重みの違いです。
昌平君という知将の存在
史実では、昌平君が楚に寝返る可能性が高いとされています。
もしそうなれば、この戦は:
「項燕×昌平君」VS「信×王翦」
という、知と武の最強同士による最終決戦になります。
昌平君は、秦において王騎や蒙武を指導してきた「知の柱」。その彼が、楚王の血筋として最期に楚に帰る——それは項燕と楚の最後の希望を繋ぐ、歴史的な瞬間です。
信の最大の試練
原泰久氏が物語全体を「信の成長譚」として描いている以上、信は項燕に一度敗れなければなりません。
李牧戦ではなく、この楚戦こそが:
になるはずです。
史実が示す物語の必然性
史実において、信(李信)は項燕に敗れます。しかし再び立ち上がり、王翦のもとで楚を滅ぼします。
その過程で彼は真の大将軍へと成長し、王騎が語った「天下の大将軍」の意味を体現するのです。
つまり項燕は、信を倒すための敵ではなく、信を完成させるために存在する最後の師なのです。
まとめ:「不在の最強」という存在の意味
登場前だからこその期待
項燕の魅力は、まだ姿を見せぬことにあります。
語られるだけで、王騎・廉頗・李牧と並ぶ、あるいは超える存在感を放つ——これは、「不在の力」と呼ばれる物語装置の極致です。
作中では彼を知る者がみな敬意を示し、ファンはその断片から彼の人物像を想像し、SNSでは「キングダム最強の未登場キャラ」「ラスボス確定」などの言葉が並びます。
登場前にして、ここまで語られるキャラクターは他にいません。
キングダムの終章を告げる存在
項燕が登場する時、それは物語の終わりの始まりです。
それは勝利の物語ではなく、喪失と継承の物語となるはずです。
項燕は、敗北の中で真の強さを示した男。
信は、敗北の中で真の将軍になる男。
二人の邂逅が、『キングダム』という作品全体の意味を完成させる——だからこそ、楚戦=項燕戦こそキングダム史上最大の山場なのです。
読者が待ち続ける理由
そして、読者がその時を待ち続ける限り、項燕は「まだ姿を見せぬ最強のまま」、永遠に語られ続けるでしょう。
それこそが、項燕という存在の最大の魅力なのかもしれません。



