11年続いた大人気作品「進撃の巨人」は、2021年4月に大盛りあがりのまま終わりを迎えました。
その後も進撃ロスを嘆き、4ヶ月経過した現在でも「あの時のシーンにはこのような意味があったのでは」とワンシーンを振り返る考察がSNSでは確認できます。
Twitterでも、その勢いは全く衰えていないように見受けられます。
進撃ファンは、なぜここまで「進撃の巨人」に惹きつけられるのでしょうか?
物語は完結し閉じた今も、なぜ振り返り新たな読み方を探るのか?
他作品と比較し、その魅力を検証してみました。
「進撃の巨人」とはなんだったのか?
解説していきます!
※あくまで私見ですのであしからずですm(_ _)m
進撃の巨人とはどのような物語なのか

物語のあらすじ
「進撃の巨人」は、主人公エレンが人類の天敵である巨人を駆逐する物語となっています。
巨人に支配される世界。
目の前で母を食べられ殺されたエレンは、人類を蹂躙する巨人を全て駆逐すると誓い、人生の目標とします。
人間であるエレンですがその身には巨人の力が宿っており、体に傷をつけることで巨人化できる特殊体質でした。
巨人の力で全ての巨人を駆逐方法を探るエレンは、行方不明な父親が重要な情報を持っていると突き止めます。
父親が残した重要な情報を求め、巨人に奪われた実家の地下室を目指します。
巨人により支配された世界では行くことができない外の世界「海」を見る夢を幼馴染みのアルミンと共有し、世界の真実を求めエレンが巨人の支配に抗う物語となっています。
物語の構造
「進撃の巨人」は、コミックス全34巻となっています。
物語は、22巻を境に前半と後半とで分かれています。
22巻までの前半は、巨人の謎・世界を知らないエレンが「グリシャの地下室・巨人駆逐・海」を目的とし達成するまでが描かれています。
23巻からの後半は、巨人の謎と世界を全て知ったエレンが「仲間の未来」と「世界の駆逐」を目的とし達成するまでが描かれています。
物語に仕掛けられた伏線と回収の構造
大きな伏線(章を超え回収される伏線)と中くらいの伏線、小さな伏線(章内で回収される伏線)の三種が仕掛けられています。
特徴として1巻・2巻のように初期に仕掛けられた伏線は作品全体の謎・伏線となっており、物語の後半、終盤に回収されています。
以下は例となっています。
- 大きな伏線
- 1巻1話タイトル「二千年後の君へ」⇛30巻「二千年前の君から」にて回収
- 1巻1話「いってらっしゃい エレン」⇛34巻138話「長い夢」にて回収
- 1巻2話から登場のミカサの頭痛⇛34巻最終話「あの丘の木に向かって」にて回収
- 2巻5話ミカサの東洋の一族・右手首の刺青⇛27巻107話「来客」にて回収
- 小さな伏線
- 5巻19話登場のニック司祭⇛9巻34話「戦士は踊る」で壁を触らせない理由回収
- 17巻70話でリヴァイに預けた注射⇛21巻84話「白夜」でアルミンに使用し回収
- 18巻72話登場の「槍?」⇛19巻76話「雷槍」にて回収
- 章・編の内訳(アース・オリジナル)
- 第1話、第2話 「シガンシナ区陥落編」
- 第3話~第18話 「トロスト区奪還作戦編」
- 第19話~第34話 「女型の巨人編」
- 第35話~第50話 「ウトガルド城攻防戦編&エレン争奪戦編」
- 第51話~第69話 「王政編」
- 第70話~第85話 「シガンシナ区決戦編」
- 第86話~第90話 「グリシャ・ノート編」
- 第91話~第105話 「マーレ編」
- 第106話~第108話 「パラディ島の3年間編」
- 第109話~第122話 「イェーガー編」
- 第123話~第137話 「地鳴らし編」
- 138話・139話 「エレンとミカサ編」
このように物語の核となる大きな意味を持つ伏線は物語の初期に仕掛けられ、物語の後半に回収される構造となっています。
さらに章の始まり辺りには章内で回収される小さな伏線も仕掛けられていおり、その意味を考察し後の展開を予想する楽しみが生まれています。
章を超えるけれど、物語の前半で回収された伏線もありますね。
これが「中くらいの伏線」となります。
例えばライナーとベルトルトの正体が「鎧の巨人」「超大型巨人」であるという伏線が4巻15話にて仕掛けられています。

二人の正体が明かされ回収されるのは、10巻42話「戦士」です。
章を超えているけれど、前半中で回収されておりこれは「中くらい」の伏線となっています。
⇛ベルトルトの正体が超大型巨人という伏線を検証
⇛ライナーの正体が鎧の巨人という伏線を検証
グリシャの地下室も1巻1話で仕掛けられていますが、21巻85話「地下室」で回収されており、後半まで持ち越してはいません。

先程のライナー・ベルトルトの正体伏線よりも大きい伏線ですが、前半中で回収されているため「二千年後の君へ」や「いってらっしゃいエレン」ほどの大きな伏線とは言えないですよね。
これも中くらいの伏線と言えるでしょう。
このように、大中小さまざまな伏線がしかけられているのが「進撃の巨人」という作品の大きな特徴と言えます。
進撃の巨人を他作品と比べ特殊性を考察
ここまでの解説の通り、「進撃の巨人」という作品の特徴は「伏線と回収」と「前半と後半に分かれている構造」と言えます。
特に物語の核となる大きな伏線が1巻と2巻に集中し、9巻くらいまでに大きな伏線が仕掛けられているのが特徴です。
いくつかの例外はあるかもですが、大きな伏線は初期に仕掛けられ、最終話に近い終盤で謎が解明され回収されています。
これはつまり、34巻の最終話までの展開がほぼ1巻2巻にほぼ決められていた、という事になりますよね。
34巻まで続く物語、そしてこれだけの規模の世界観の作品で最初から最終話に回収される伏線が仕掛けられているというのは、かなり稀有ですよね!
アースがこれまでに出会ったのは作品では、「進撃の巨人」が唯一です!
もうひとつの特徴の「前半と後半に分かれている構造」も、かなり珍しいですよね。
「東京喰種」と「東京喰種:RE」を連想しますが、似ていますがちょっと違います。
「進撃の巨人」は前半の最大回収「グリシャの地下室」「巨人駆逐」「海」が回収された22巻で、主人公エレンがヒストリアの手の甲にキスをした事が23巻以降の展開を決める最大の伏線となります。

この一コマが、前半から全てをひっくり返す新伏線となります。
22巻までのエレンは世界中で最も何も知らない存在であり、物語の進行と共に世界の謎を解き明かしていきます。
読者はエレン目線で、エレンと共に世界の謎を解き明かして行く展開となります。
しかし23巻以降の後半ではそれが逆転しエレンは世界で最も全てを知った存在となり、物語の進行と共にエレンの目的を示す伏線やヒントが散りばめられます。
読者はマーレ側目線や調査兵団目線でエレンの目的を考え解き明かしながら、作品を読む展開となります。
これはグール目線であった「東京喰種」と喰種捜査官となる「東京喰種:RE」とは、少し違いますよね。
少なくとも読者は、主人公カネキが喰種捜査官になった理由が早い段階で分かっています。
さらにカネキ自身が世界を何も知らない存在であることは変わらず、むしろ「東京喰種:RE」初期では「最も何も知らない存在」となっています。
グールと喰種捜査官側の両方の世界を詳細に描こうとする試みは「進撃の巨人」とかなり似ていますが、物語の構造自体はかなり違いますし描き方も違います。
ここからも進撃と東京喰種の構造は違っており、「進撃の巨人」の構造はかなり稀有なのではと感じられます。
さらに「伏線と回収」でも述べた通り、最初から全ての展開が決められて描かれたと伏線からも分かります。
ライナーとベルトルトの「故郷」。
巨人が南からやって来るという設定。
これらから諫山先生の中で後半のマーレ編以降の設定も最初から決められており、物語の後半の展開も最初から頭にあったことが分かります。
これ、本当にスゴいですよね!
前後半に分ける二重構造も最初から決めて描いていた…
「進撃の巨人」の大きな特徴は、初期から最終話までの展開が入念に考えられ、全て決められていた事にあるでしょう。
本当に想像も付かないほど入念に考え込まれた物語だと感じられます。
ここに、非現実的なフィクション世界でありながらもまるで本当にあるような世界が生まれた理由があるように感じます。
「進撃の巨人」の特殊性とは、「想像できないほどに考え作り込まれた物語にある」と考えられます。
進撃の巨人独自の魅力は諫山創ならではの才能か
「最初から考え抜かれ仕掛けられた伏線と回収」と「前後半に逆転する物語構造」。
これらが「進撃の巨人」の特徴であり他作品に見られない特殊性だと考察できましたが、プラスとんでもない諫山先生の才能が物語を神作品に昇華させていると分かるコメントが、「公式ファンブック」にて明らかとなっています。
こちらで紹介し考察しているので、ここでは諫山先生のコメントは簡単にまとめ紹介します。
- 諫山先生には他人に教えられない感覚があり、それが漫画家として役に立っている。
- 即興で作ったストーリーが後の展開で偶然繋がることがある。
- サシャを撃ったガビがカヤと出会いサシャファミリーと関わりを持ったのは偶然。
- このような物語が繋がる感覚がネームの締め切り前に毎回あった。
ガビとカヤのエピソードは偶然だった!
これ、間違いなく諫山先生の才能ですよね。
このインタビューでは「物語の幹となる部分は事前に決めていましたが、物語の細部やその他のキャラクター達の行動は連載を続けていく中で決めていった」とあります。
先程の考察で取り上げた「大きな伏線や前後半で分けた物語の構造」は事前に決められていたのでしょうが、小さな伏線や展開は連載中に決められていた事が想像よりも多かったかもしれませんね。
普通だったら「最初から決めていなければ無理だろう」と感じられるエピソードも、諫山先生のこの感覚で途中で生まれた展開かもしれません。
もの凄い才能ですよね!
ただこの諫山先生の感覚が「進撃の巨人」を名作にし、物語が閉じた後も読者を離さない魅力を放っている事は間違いないでしょう!
まとめます。
- 最初から考え抜かれ仕掛けられた伏線回収と物語の二重構造が「進撃の巨人」の特殊性であり最大の魅力。
- 諫山先生の「後の展開で偶然繋がることがある独自な感覚」により、さらに物語を昇華させている。
こうなって来ると「進撃の巨人」で感じられる魅力を他作品に求めるのは難しいと分かりますよね。
諫山先生の才能、感覚に依るところが大きそうなので…
となると、「進撃の巨人」と同じくらい夢中になれる作品は諫山先生の次回作となりそうです。
それはいつになるのか…
とりあえずはアニメFinalSeason2を楽しみにし、来年以降までは待つことにはなりそうです。
「進撃の巨人」と同じくらいの夢中さになれる作品であるならば、いつまででも待てますよね。
この記事を読んでいるみなさんも、そうではないでしょうか?
その時は、またリアルタイムで追いかけまくりますよ!







